2018年9月17日月曜日

西洋絵画と幾何学

西洋絵画では東洋絵画とは違い境界線を引かず、面の連なりとして画面を構成するという。 つまり東洋絵画で明示される曲線は、西洋絵画では人間が勝手に見出すに任される。 ということで、曲線とは領域の境界線、なる指導原理にしたがって定義できるか考えてみる。

まず \(\mathbb{Q}^2\) を用意する。 とりあえず、ここで用意した有理数の組自体を点とは呼ばないでおく。 まあ、あとで点を定義するとこれらも点と呼ばれる資格を持つはずだが。

《線分》を二元 \(p, q \in \mathbb{Q}^2\) の線形結合 \(\lambda p + (1 - \lambda) q\) として得られる \(\mathbb{Q}^2\) の部分集合と定める。 ただし、\(\lambda \in \mathbb{Q}\) かつ \(0 \leq \lambda \leq 1\) である。 《線分》は \(p, q\) を結ぶと言うことにしよう。 《線分》は定義したい曲線とは無関係な道具立ての一部である。

次に、 \(\mathbb{Q}^2\) を2つの部分集合に分割することを考える。 \(S \subset \mathbb{Q}^2\) と \(T = \mathbb{Q}^2 \setminus S\)。

\(S\) が《連結》とは \(S\) の任意の2元の間を、有限個であれば他の元を何個抜いても有限個の\(S\)内の《線分》で結べることと定義する。 たとえば、単位円の内部 \(S = \{(x, y) \in \mathbb{Q} | x^2 + y^2 < 1\}\) は《連結》である。

いま \(S, T\) がどちらも《連結》で、どちらも何らかの円を含むと仮定する(広がりをもつ、と言いたい)。 \(s \in S\) が《境界》にあるとは、\(s\) を中心とするどんな円も \(S, T\) とそれぞれ空でない共通部分を持つことと定義する。 さらに、\(B_S \subset S, B_T \subset T\) がどちらも《境界》にある元の集合のとき 分割 \(S' = (S \setminus B_S) \cup B_T, T' = (T \cup B_S) \setminus B_T\) は \(S, T\) と《同値》であると定義する。

このとき、分割の《同値》類 \(S, T\) を「曲線」と定義する。 特に、\(S\) が(または定義は対称なので \(T\) でもいいのだが)有界ならば、「閉曲線」である。

たとえば、単位円は \(S = \{(x, y) \in \mathbb{Q} | x^2 + y^2 < 1\}, T = \{(x, y) \in \mathbb{Q} | x^2 + y^2 \geq 1\}\) の《同値》類。 《境界》にある元は \(x^2 + y^2 = 1\) の有理解だから、それらを \(S\) の側に入れるか \(T\) の側に入れるかしたすべて。

…といったことろ(最後の「すべて」に非可算無限個の同値な分割が現れるのを見た辺り)で力尽きた。 だいぶ雑だが、ある意味でデデキントの切断を2次元に上げれば有理数体だけに基づいて曲線が定義できるんじゃないか、という話でもある。

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