2024年2月25日日曜日

100均のマクロレンズ - 続ダイダイゴケ

去年だったか100均でスマホにクリップで付ける簡単なマクロレンズを買っていた、のを思い出したので使ってみる。

コウロコダイダイゴケ Squamulea aff. subsoluta

ツブダイダイゴケ Gyalolechia flavovirescens

不明種。前回「生え方が厚みがある気がする」とか言っていたが、拡大したら子器だらけで、上の二つとは別種ということでいいいと思う。 地衣体がほぼ無い種類として Athallia という属があるらしいので、その仲間だろうか、とか想像してみたり。

2024-03-10追記: 3枚目の写真だが、いろいろ観察してきた結果コウロコダイダイゴケだと判ってきた。 どういう環境だとこうなるのかまでは不明だが、コウロコダイダイゴケのコロニーを見ていると時々こうした子器だらけの領域が現れる。 この写真の場所もきっと端の方まで観察すれば普通のコウロコダイダイゴケっぽい領域に続いていると思う。

2024年2月20日火曜日

ダイダイゴケ

ここ数週間地衣類を見るのにはまっている。 きっかけは何となく読んでみた本からなのだが、今まで意識に上っていなかったそこらで目にするあれもこれも地衣類だということに気付いてしまったら、もう見逃すことができなくなってしまった。 種類をちゃんと知るためにはルーペで細かい部分まで見る必要があって、種を同定するというレベルだと特有の分泌物質を検出することが必要になるらしいのだが、そこまでは無理。ルーペは買うべきかも知れないが。 ざっくり見分けるレベルだったら、図鑑と見比べるぐらいで何とかなるだろうと、最新の安価な図鑑を買った。「街なかの地衣類ハンドブック」というやつだ。

最初のうちは、ダイダイゴケ、モジゴケ、ウメノキゴケのように目や科のレベルで認識するので手一杯だったが、そのうちよく見掛けるダイダイゴケの中にたまに雰囲気の違うような気がするものがあるような気がしてきた。 もう一度ハンドブックに戻ると、コウロコダイダイゴケとツブダイダイゴケが載っている。よく見るのはコウロコダイダイゴケの方だ。これは本当に住宅街には遍在していると言っても良いほどそこら中に生え散らかしている。 雰囲気の違う物がツブダイダイゴケの記述に当てはまるか、と言われると、それも違う気がする。 ということで他の資料を見たいのだが、そもそも日本語の地衣類図鑑は大昔のものを除くと、あとは(自費出版か何かの類いなのか)携帯版と称するもので5000円ぐらいするやつしかない(後に、図書館で実物を見たがフルカラーで値段的には妥当かもしれないがいきなりは手を出しにくい)。 ということでネットの大海に乗り出すために、ハンドブックで学名を確認する。 コウロコダイダイゴケ Squamulea aff. subsoluta。ツブダイダイゴケ Gyalolechia flavovirescens。 aff?

【aff. affinis】○○△△に類似の意味。特定の種または亜種に類似するが、重要な分類形質の一部が明らかに一致しないことから、未記載種の可能性の高い場合に、属名と種小名の間に挿入する用語。○○ sp. aff. △△というように用いる(○○は属名、△△は種小名)

Ⅶ 用語解説

つまり学名が確定していない! こんなにそこら中にある普通種の学名が確定していない状態で安閑としていられるものなのか? サザエがずっと別種と取り違えられていて最近新種と判った、などという話もあるし研究者は普通種に興味が無いものなのかもしれない。

一方、Squamulea や Gyalolechia という属が設けられたのは長い博物学の歴史からすると極最近のわずか10年前のことで、分子生物学的なつまり DNA の系統分析の波が押し寄せて今まで巨大な分類群だった Caloplaca がバラバラになり、その後も一部は別の分類群に移動したり、とダイダイゴケ類(を含め地衣類)の分類は今激動期のようだ。 ツブダイダイゴケを web で探すと以前の Caloplaca flavovirescens としているページの方が多く出てくる。 そして、より新しくは Laundonia flavovirescens のようだ。

コウロコダイダイゴケのように、ダイダイゴケ類でコンクリートの上に生えてる種類、みたいなものを探してみる。たとえば Xanthocarpia crenulatellaFungi of Great Britain and Ireland の生息地の説明を見ると "On flat concrete such as drain covers and disused airfield runways, rarely on inland limestone." などとあり、写真も割と似たものに見える。 ただし、いろいろな物が混ざっているので再考が必要("According to Vondrák et al. (2011) the species is polyphyletic, and the status of GBI material needs further research.")、みたいな注意もあり分類の難しさが判る。

話を戻して、「雰囲気の違うやつ」に関しては、生え方が厚みがある気がするのでその方向で何か探せないかと思うのだが、いかんせん写真頼りで調べるのは限界がある。 学術的な記述で探し出すのってどうやるんだろう。 そもそも論文にアクセスするのも大変そう(大学などの機関に属しているわけではないので)。 何か進展があればまた書くかも知れないが、一瞬の熱狂で終わる可能性も…。