2022年5月11日水曜日

冪乗の「冪」。 「冖」が意符で「幕」が音符、と理解していたが、意外と混沌としていた。

漢字それぞれの成り立ちについて解説しているページというのが案外見つからなかったので、個人のページを参照するのだが、

白川

形聲。聲符は冖。

儀禮・既夕禮冪用疏布(冪に疏布を用ふ)の《注》に覆ふなりとあり、棺を覆ふ布をいふ。

雲が深く垂れ籠めることを「雲、冪冪たり」といひ、すべて深く覆ふことをいふ。

藤堂

幕と音符冖(覆ひ隱す)の會意兼形聲。幕で覆ひ隱すことを示す。冪は冖の後出の字。

冪 - 漢字私註

まずワ冠としか読んでいなかった「冖」の音、ベキ、でなんと「冪」と同じなのだ。 なので上に引用した2説はどちらも「冖」が音との立場。

私の元々の理解は手元にあった辞書でいうと『新明解漢和辞典』の次の解説が当てはまる。

形声、幕バクの転音が音。

一方『新字源』には全然違うことが書いてある。

会意形声。幂が本字。幂は巾きん(きれ)と、おおう意と音とを示す冥ベイ→ベキとから成る。もと、幎ベキと同じ。冪は冖ベキと幕とから成る。

草冠の欠けた形が本字とは、という驚き。 そして、誤字としか言えない「羃」を排撃して、返す刀で「巾」なる略字もバッサリいく予定で始めた調べ物だったのに一分の理がありそうな記述を見つけてしまい、ちょっと悔しい。

方向を変えて、覆い隠すというような意味の漢字が冪乗を表す理由を探してみた。 次のようなネット上の答を見つけた。

ワかんむりに幕ですから、「ワ」かんむりは「オホフ」の意味、幕も「覆いかくすもの」の意味。会意形声文字で、「覆い」さらに「覆う」から和義として、「同数の相乗積」の意となる。と、調べられました。(大字典より)

教えて! goo

もともとの記述がどこからどこまでなのかは『大字典』を確認する必要があるが、ともかく「冖」と「幕」から成る字という前提でしかこの説は成り立たない。

着地点を見失ったこの文章、「冪」を略すなら「冖」がいいんじゃない? 略す必要もないけど。 という誰も得しない結論をもって終わりとする。