2014年3月6日木曜日

イリアス

ホメロスの「イリアス」と言えば古代ギリシアの古典なので読んだことがある人もいるかもしれない。 私は最近になって初めて手に取った。 理由はトロヤ群小惑星の名前を理解したかったから、という脇道からなのだが、この理由の方がよほど解説が必要そうなのでしておこう。

トロヤ群小惑星とは木星のラグランジュ点L4とL5の近辺に位置する小惑星群のことである。 この小惑星群の命名規則としてL4の方がトロイ戦争におけるギリシア方、L5がトロイ方の名前を付けることになっているのだが、一部混乱があってパトロクロスは、ギリシア側とトロイ側のルールが決まる前に命名されたため、L5の位置にあるにも関わらず、ギリシア側の名前がついている。他に、ヘクトルもL4の位置にあるにも関わらず、トロイ側の名前がついている(Wikipedia日本語版 木星のトロヤ群)。 この説明を見て、パトロクロスとヘクトルって誰? と思って「イリアス」を読み始めたのである。

あらすじ(古典だからネタバレとか気にしない)はこんな感じ: トロイ戦争が始まって9年のある日、ギリシア方の総大将アガメムノンとアキレウスが戦利品たる女を巡って仲違いをする。 というかアキレウスがへそを曲げて戦場に出てこなくなる。 そのため当初ギリシア方が優勢に進めていた戦闘が次第にトロイ方に押されてくる。 この状況を何とかしようとアキレウスの親友パトロクロスはアキレウスの鎧を身に帯びて戦場に出るが、戦死してしまう。 アキレウスはようやく戦場に出るとトロイの大将ヘクトル(戦争の原因を作ったパリスの兄)を討ち、親友の仇を取る。

この話の切り取り方一つとっても絶妙である。 長いトロイ戦争を語るわけでもなく、その決着の有名な木馬の話をするでもなく、10年続くトロイ戦争の9年目の2,3週間のできごとを描く。 英雄アキレウスの自分勝手とも思えるサボタージュとその戦闘への影響が読者(というか聞き手か)をハラハラさせるし、 結局はアキレウスが仇を取って溜飲を下げさせてくれるし、 古典として生き残るだけのことはあると感心した。

ということで未読の方は是非。
ホメロス「イリアス」岩波文庫