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Aurifeuille 恒等式の計算方法 (Stevenhagen)

この Aurifeuille シリーズは2年ほどブランクがあって3回目。 前2回は Aurifeuillian 因数分解Aurifeuille 恒等式 について書いた。 今回は計算方法の一つを紹介する。

簡単にするためにあまり複雑な一般化は省いて、 平方因子を持たない 2 以上の整数 k に対し、nk1(mod4) ならば k、そうでなければ 2k とする。 このときある整数係数多項式 FG により円分多項式 Φn(X) を F(X)2kXG(X)2 という形(Aurifeuille 恒等式)に書ける。 この FG を求める方法を見ていきたい。

k=5 の時のように整数 Φn(k) の因数分解をして k 進数展開から求めるのは、いろいろ問題がある。 整数の因数分解自体が難しいし、k 以上の係数や負の係数が必要になると破綻してしまう。 一般的に使える方法は、もっと代数的な議論だ。

前に見たように kζn が Q[ζn] で平方数になっているというのがキーだった。 ここで紹介する Stevenhagen の方法は、kζnQ[ζn] に入っているならば、ζn の多項式で表せるという事実に基づいている。

具体的な kζn を表す ζn の多項式が H(X)=1a2n(a,2n)=1(ka)=1X(a+1)/2 と与えられる。実際 Xζn を代入すると、 1/2 乗は ζnζ2n にし、 +1 の分の ζ2n で括った残りは Q(ζ2n) から Q(k) へのトレースになりそれは値として k だから結局 ζ2nk=kζn となる。 この HΦn にユークリッドの互除法を適用する。 余りの次数が段階的に下がっていくが、最初に ϕ(n)/2 以下になった多項式を f とし、次の段階の多項式を f とする。 このとき、f の定数項を f の適当な有理数 α 倍で消したもの fαfXg とおくと、 f を先頭項係数 c で割ったものが F、逆にその cg に掛けたものの符号を調整すると kG となる。 という形で FG が求められる。

最後の部分が不思議な感じなのでもう少し補足しておく。 補助的な多項式 γiγ0=1, γ1=0 から始めて、 Φn=|1H0Φn|=±|γifiγi+1fi+1| とユークリッドの互除法を行変形と見ていくと、行列式は符号を除いて一定である。 定数項を消す処理も行変形なので Φn=±|γfγf|=±|γfγXg| が得られる。 一方 Aurifeuille 恒等式は Φn=|cGcFc1Fc1XkG| と表現できる。 最後の二つの式の右辺の要素同士が(符号を除いて)等しいことが言える(詳しくは参考文献を)ので上のようなアルゴリズムとなる。

例として k=7 としてみよう。n=14 だ。 1 以上 28 以下かつ 28 と互いに素かつヤコビ記号 (7a)1 という条件を満たすのは a{1,3,9,19,25,27} なので、 H14(X)=X+X2+X5+X10+X13+X14 だ。 この f0=H14 と円分多項式 f1=Φ14 にユークリッドの互除法を適用する。 f2(X)=f0(X)modf1(X)=X42X3+2X2+2 f3(X)=f1(X)modf2(X)=X33X23X1 f4(X)=f2(X)modf3(X)=14X2+14X+7 ここで f3 の次数が ϕ(14)/2=3 以下なので、f=f3f=f4 とする。 f の定数項 7f で消すために α=7 とする。 f(X)αf(X)=7X37X27X これを X で割って g(X)=7X27X7 を得る。 f の先頭係数は 1 なので、 F(X)=f(X)=X3+3X2+3X+1 G(X)=g(X)/7=X2+X+1 よって Φ14(X)=(X3+3X2+3X+1)27X(X2+X+1)2 を得る。

参考文献

P. Stevenhagen "On Aurifeullian factorizations Indagationes Mathematicae (Proceedings), Volume 90, Issue 4, 1987, Pages 451-468

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