前回、概要を紹介した Aurifeuille 因数分解。 その最後に円分多項式が \(F(X)^2-kX^qG(X)^2\) という形に分解される、というところまで書いた。 今回は、そちらをメインに書いていこうと思う。
と、その前に、タイトルについて補足しておこう。 前回のタイトルが「Aurifeuillian 因数分解」だったのだが、慣習として人名の形容詞形は日本語の中では使わないことを思い出して — Hermitian operator はエルミート演算子、Cartesian coordinates はデカルト座標、のように — 今回は「Aurifeuille 恒等式」というタイトルにした。
最初に記号をまとめておく。 \(k\) を無平方な(素因数の二乗では割り切れない)正整数とする。 \(d\) を \(\mathbb{Q}(\sqrt{k})\) の判別式とする。 \(k \equiv 1 \pmod 4\) ならば \(d=k\)、そうでなければ \(d=4 k\) である。 \(n\) は奇数であって \(d\) で割り切れるか、偶数であって \(d\) では割り切れないが \(2\) 倍すれば \(d\) で割り切れる正整数とする。 つまり \(k \equiv 1 \pmod 4\) ならば \(k\) の奇数倍、そうでなければ \(2 k\) の奇数倍である。 \(q\) はほとんど使わないが、\(q = \prod_{p|n,p\neq 2}p^{v_p(n) - 1}\) とする。 \(n\) を無平方に限っておけば \(q=1\) である。
さて、いろいろ調べてみると、円分多項式に対する恒等式として似たようなものが2種類ある。 1つは主に Gauss の名に紐付けられる、 \[4\Phi_n(X) = A(X)^2-\epsilon k B(X)^2\] という形の恒等式、もう1つが主に Aurifeuille の名に紐付けられる \[\Phi_n(X) = F(X)^2 - k X^q G(X)^2\] という形の恒等式である。 どちらも円分体とその部分体である2次体との関係を利用するのだが、やり方が少し異なる。
Gauss の方は、円分多項式の根を冪が平方剰余のものと平方非剰余のものに分ける。 \[\Phi(X) = \prod_{m:平方剰余}(X-\zeta^m)\prod_{m':平方非剰余}(X-\zeta^{m'})\] ガロワ群が \((\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^{\times}\) と同型で作用が冪で表されることから、 指数 2 の部分群を考えている、つまり対応する2次体を考えていることになる。 実際それぞれ2次体の元であるところのガウス周期が係数に出てきて、それが分母 \(2\) であったり虚数単位を伴ったりするために、整数係数の式にまとめる際に左辺の \(4\) (分母を払った)や符号 \(\epsilon\) (虚数が出てくる場合に負) が現れる。
一方 Aurifeuille の方は一度 \(\Phi(X^2)\)を考える。 \(X^2-\zeta^m\) という因子を和と差の積に分解しておいて、それを敢えて \[\Phi(X^2)=\prod(X-\chi(m)\zeta^m)\prod(X+\chi(m')\zeta^{m'})\] と基本的には平方剰余記号である係数 (\(\chi\) とここでは書いた) 付きの積二つに分ける。 これにより今度は分母を伴わない \(k\) の平方根であるガウス和が係数に現れる。 まとめ直すと \(X^2\) の多項式になっているので、これを改めて \(X\) と置き換えれば、欲しかった恒等式が得られる。
以上、非常にざっくりした怪しい説明だが違いが何となく解ってもらえればそれで良い。
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