2013年5月8日水曜日

abc予想と昔考えたこと

その昔、円分多項式に整数を代入したとき素冪が出てくることがあるのか、というようなことを考えたことがある。 その時は、円分多項式 \(\Phi_m(X)\) に対し素数 \(p\) と原始 \(m\) 乗根 \(x\) を固定して、 \(x\) から始まる \(p\) 進 \(m\) 乗根の展開に \(0\) が沢山続くと…。 詳細は忘れたが、まあ不都合が発生するということになっていたはずである。 というようなわけで、\(p\) 進展開を計算させてみた記憶がある。

最近 ABC予想入門 という新書を読んだので、それをこの素冪の問題に応用してみようと思う。

abc予想:
任意の \(\epsilon > 0\) に対して, ある正の定数 \(K(\epsilon)\ge 1\) が存在して, 次を満たす:
\(a\), \(b\), \(c\) が互いに素な整数で \(a + b = c\) を満たすならば, 不等式 \[\max \{|a|, |b|, |c|\} < K(\epsilon) \{\text{rad}(abc)\}^{1+\epsilon}\] が成立する.

\(p\), \(q\) を素数として、\(\Phi_q(x) = p^n\) だったとする。 式を書き直すと \(x^q - 1 = (x-1)p^n\) となるので、\(a = x^q\), \(b = -1\), \(c = (x - 1) p^n\) として、 予想の前提を満たす。 よって、予想を仮定すれば \[\max \{x^q, 1, (x-1)p^n\} < K(\epsilon) \{\text{rad}(x^q \cdot 1 \cdot (x-1)p^n)\}^{1+\epsilon}\] となるが、左辺は \(x^q\)、右辺は \(K(\epsilon) (x(x-1)p)^{1+\epsilon}\) である。 すなわち \[x^q < K(\epsilon) (x(x-1)p)^{1+\epsilon}\] で、右辺の \(x-1\) を \(x\) に置き換えて \[x^{q-2-2\epsilon} < K(\epsilon)p^{1+\epsilon}\] を得る。

一方左辺をより小さくして \((x-1)p^n\) として評価すると、 \[p^{n -1 -\epsilon} < K(\epsilon)x^{1+\epsilon}(x-1)^{\epsilon}\] なので、\(x-1\) は \(x\) で置き換えて \[p^{n -1 -\epsilon} < K(\epsilon)x^{1+2\epsilon}\] となる。

今 \(\epsilon = 1/4\)、\(K=K(1/4)\) とすると、 \[x^{q-5/2} < K p^{5/4}\] \[p^{n-5/4} < K x^{3/2}\] なので \(n \ge 2\) のとき \[x^{q-5/2} < K p^{5/4} < K p^{2n-5/2} < K^3 x^3.\] この式は \(q > 11/2\) ならば \(x\) が十分大きいときに成り立たなくなる。

つまり、abc 予想が成り立てば、各素数 \(q \ge 7\) に対し \(\Phi_q(x)\) が2次以上の素冪になるような \(x\) は有限個しかない。 またその上限は \(q\) と abc 予想の定数 \(K(1/4)\) で決まる。

実に強力な予想である。

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