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今年の夏に見たクモ

今年の夏はクモに目が行くことが多かったような気がする。 きっかけは植木の間に巣を作ったクモの種類を調べたところからだった。 [写真1] 垂直円網に体長5ミリほどのクモが頭を上にしている。 一般的に蜘蛛の巣というと垂直円網を思い浮かべるが本当は案外少数派である、というようなことは去年クモの糸についての本を読んで知っていたので、それが手がかりになるはずということで図書館に行ってクモの図鑑「 原色日本クモ類図鑑 」を開く。垂直円網で調べるとコガネグモ科ということが判って、頭を上に向けて止まる種類はほとんど無く、ギンメッキゴミグモかギンナガゴミグモというところまでは絞れる。模様を図版と見比べて、ギンナガゴミグモかなあというのが最初の判断だったが、体型が長細くは感じず確信が持てなかったので、ほかの図鑑類も見てみることにした。 ギンナガゴミグモについて「 ネイチャーガイド日本のクモ 」曰く"本州中部以北の記録はほとんどクマダギンナガゴミグモと思われる"と新たな種の示唆が。 「 クモの巣ハンドブック 」を開くと、ギンナガゴミグモの巣には白い帯があることが判った。 巣の全体はこの写真には入っていないが、白い帯はなかったので、ギンメッキゴミグモの方らしい、という結論になった。 その後も時々見てみると、だんだん腹部全体が白っぽく光っているように見えてきたので、あるいは模様は成長と共に消えるようなものだったのかも知れない。 家の中で、近年はアダンソンハエトリ[写真2]しか見掛けない、と思っていたが、2種類ほどよく判らないクモにも遭遇した。大きさはアダンソンハエトリと大体同じ。 [写真3] 木目調の壁にいるから青っぽく見えているだけでただの灰色なのかも知れないが、ぱっと見青いクモがいると思った。 [写真4] こちらは床にいた。ハエトリグモの仲間かと思って「 ハエトリグモハンドブック 」を眺めてみたが、よく判らなかった。 [写真5] 近所の塀にいたクモは多分ネコハエトリのメス。ハンドブックには"草地の草本や低木の上に見られる"と書いてあったが。 他にも、空中に巣を張っている小さいクモを撮ろうとしたことがあったけど、iPhone がどうしても背景にピントを合わせてしまって上手くいかなかった。 ...

(近所の)生物図鑑

ときどき、街で見掛けた生き物(主に植物と昆虫)の写真を撮って、これは何かな、などとウェブで検索する。 判ったら SNS に投げたりして。 判らなかったら、図書館で図鑑をめくったりもする。 ところで、そんなに行動範囲が広いわけではないので、たとえば23区内の生き物に絞った図鑑があったら事足りることが多そうだ。 そんな中、最近、「せたがや動物ガイド」という世田谷区が出していたガイドブックを古本で手に入れた。 「世田谷自然観察シリーズII」とあるので、きっと I は「せたがや植物ガイド」なのだろう。 そして忘れていたが、昔杉並区が出しているもっと薄い「すぎなみの植物」「すぎなみの鳥」「すぎなみの昆虫・クモ」も買ったことがあった。 ひょっとして、どの区も似たようなものを出していたりするだろうか。 あるいは、もっと全国的に? ということで調べてみた。 ようするにウェブで検索してみた、ということだが、引っかけるには若干のコツがあるようだ。 最初は検索のキーワードが判らず「図鑑」とか「ガイドブック」とか入れていたものの、全然(杉並区も世田谷区も)出てこない。 役所的にはこれらの本はそうやって分類される物ではなく、数ある刊行物の1つということで「刊行物」と入れると俄然引っかかるようになった。 自治体 タイトル 値段 リンク 江戸川区 野の花 春・夏 210円 トップページ > 区政情報 > 広報・広聴 > 報告書・刊行物 > 刊行物 > 江戸川区の自然(1)から(4) 野の花 秋・冬 210円 樹のはなし 210円 昆虫の博物誌 210円 葛飾区 葛飾区生きものガイドブック 1000円 トップページ >くらし・手続き >環境 >自然環境・自然観察 >「生きものガイドブック」を販売しております 葛飾の昆虫・クモ 1200円 葛飾の水辺の生き物 1200円 北区 北区植物ガイドブック 670円 ホーム > 区政情報 > 広報・広聴 > 区政資料室 刊行物一覧 北区野鳥ガイドブック 660円 北区小動物・昆虫ガイドブック 710円 ...

隣接代数と多項式環

概要: 前回 多項式の積を余代数から定義するということをしたが、その余代数の出所はどこだ、というような話。 自然数は加法モノイドであるだけでなく、順序集合である、ということが大事なのではないか。 局所有限な半順序集合(poset) P に対し、その区間(interval)を [x,y] のように書く。 局所有限とは、xy なる2元が何であっても xzy となる z は有限個しかない、という条件である。 体 K を固定して、P の区間を基底にした線型空間 IP を考える。 IP に余乗法(comultiplication) ΔΔ([x,y])=z[x,y][x,z][z,y] で定義する。余単位 ϵ[x,x] に対して 1、それ以外で 0となる関数とする。 これによって IP は余代数となる。 この余代数に対して、双対空間を代数にするために、前回やった積の mK(fg)Δ という作り方を踏襲すると (fg)([x,y])=z[x,y]f([x,z])g([z,y]) という形で双対空間 IP が代数になるが、これを P の隣接代数(incidence algebra)という。 ζ関数とかメビウス関数とかを定義して poset に関する議論をするために使うものだ。 そうそう、積の単位元はδ関数(1点からなる区間で 1、 それ以外で 0 となる関数)だ。 モノイドの構造と両立する順序構造を備えたものを順序モノイドという。 ねじれのない(torsion-free)消去的可換モノイドには全順序が入れられる。 多項式を考えるためには NNn などを考える。 後者に全順序が入るのも大事ではあるのだがいったん忘れて、\(\mathbb{N}...

多項式の掛け算の回りくどい定義

多項式の定義にはいくつか方法があるが、今回は「多項式は自然数から係数環への関数」というタイプの定義を扱う。 この前、Gilmer の Commutative Semigroup Rings を読み返していて、半群環の定義に差し掛かった。 R is an associative ring and that (S, *) is a semigroup. Let T be the set of functions f from S into R that are finitely nonzero, with addition and multiplication defined in T as follows. (f+g)(s)=f(s)+g(s) (fg)(s)=tu=sf(t)g(u) where the symbol tu=s indicates that the sum is taken over all pairs (t, u) of elements of S such that t*u=s. S を自然数の加法モノイドだと見れば多項式環の定義になる。 そこでふと思ったのは、この tu=s の辺りは余乗法(comultiplication)なのでは、ということである。 群環を Hopf 代数と考えるときの余乗法は Δ(g)=gg というタイプのものなので、それとは異なる何かということになる。 S が基底になるような線型空間 V に、余乗法を Δ(s)=tu=stu から定める。 余単位 ϵ は S の単位元だけ 1 に写して、ほかは 0 になるクロネッカーのデルタを使う。 これで余結合律や余単位律が成り立って V が余代数になる。 (S が半群という仮定だと単位元の存在が保証されないから、モノイドでないと通らない。 また、余代数は線型空間に余乗法を入れたものなので、係数が体になってしまった。 ここは多分言葉の問題で、環を係数にしても話は同じに進行すると思う。) 今度はこれを多項式の乗法の...

pyi スタブ

私は基本的に Python で型を書きたくない人で、 Python で型を書くと関数定義行が長くなって読みにくくなるのが嫌だなというのが型を書きたくない理由の1つだったのだが、 関数の(に限らないけど)型だけ別ファイルに置いておく仕組みがあった。 スタブ(stub)ファイルというもので、実は型を書けるようにする仕組みと同じ時に誕生してたので、知らなかった方がおかしいのかもしれない。 ともかくこれで(保守コストはさておき)型を書くことへの抵抗感はぐっと減った。 別ファイルの型情報を誰がどうやってどこに引っ張ってくるのか、という部分については、型チェッカーを単独で導入するほどのやる気になったわけではないので、VSCode の Pylance というプラグインが勝手にやってくれるに任せることにして、少し書いてみた。 結果は微妙である。 他のモジュールから import した関数などはちゃんと型が見えるのだが、そのファイル内で定義している関数の型はスタブから読まれない。 Unknown な引数を受け取って Unknown な型を返すようにしか示されない。 ネットでざっくり調べたところによると、スタブファイルを使うことでモジュール本体をパースするより手軽に型を取り込める、といった用途で使うものとの主張を見た。 一方で PyCharm は pyi スタブから型を読んで当てはめてくれるらしい。 こっちの方が直観的には便利。 理想的には、py + pyi とインラインで型を付けた py と自由に行き来できたら幸せ。 妥協案として、インラインで型を書いても良いけど「アノテーションを隠す」モードが提供されたらだいぶマシ。 VSCode にそんなプラグインがあったりするかなと思ったけど、editor.semanticTokenColorCustomizations で色を変えたり bold/italic にしたりがカスタマイズの限界なので難しいか。

杉並区内の金太郎 2023

遡ってみたら前回この話題を書いたのは2015年の正月だった( 杉並区内の金太郎 )。 最近上井草の方に行ったら、井草川暗渠のさらに上流側でいくつか見た。 これも含め、見掛けるたびに撮っていた写真に残っていた位置情報から、 地図 にしてみた。

2022年の読書

いわゆる老眼というやつで文庫のルビとか数式の添え字とかが読みづらくなってしまって、読書量が減っていた。 夏頃に眼鏡を導入したが、それで読書量が戻ったかというと、そうでもないかもしれない。 読書メーターの記録 によるとマンガを入れて76冊。 マンガを除くと50冊程度だろう。 印象に残っている本は 「 カルロ・ロヴェッリの科学とは何か 」 「 詳説データベース 」 「ギリシア哲学者列伝( 上 中 下 )」 「 因果推論の科学 」 辺り。科学とは何かではアナクシマンドロスから説き起こされていたが、ギリシア哲学者列伝でのアナクシマンドロスの記載に無いこともいろいろ語られていて、別のソースが伝わった幸運なケースなのかもしれないと思ったり。詳説データベースはデータベースの実装方法の説明といった内容で、普段データベースはそこに有るものとして中身を余り考えない対象だが、知ればそれが何かの場面で役に立つこともあるだろう。最後の因果推論の科学は最近読んだ分厚い本なので、まだ新鮮(別の教科書を読んでみたいとは思った)。 今年も YouTube きっかけで読んだものがいくつかあって、 ウェザーニュースのキャスター檜山沙耶さんのエッセイ「 ブルーモーメント 」、 こはやし【古生物ちゃんねる】経由で「 クモはなぜ糸をつくるのか? 」 など。 ※本のリンクはamazonアフィリエイトです。