サツキの葉が無くなっていた。 ルリチュウレンジの幼虫に食い尽くされたようだ。 ルリチュウレンジのルリはもちろん瑠璃の意味で、成虫の体色が青っぽいところから来ている。 ではチュウレンジとは? 意外にどこにも正解が見当たらない。
手軽に手に取れる図鑑類にそんなに詳しく解説されるほどのものではない。
一応図鑑的記述の例として「標準原色図鑑全集 昆虫」というのが図書館にあったのでそれから引いてみる。
体長9mm。全体が濃い青藍色で光たくが強い。日本各地に産する。
という本文とルリチュウレンジハバチの幼虫はツツジの大害虫として有名である。
という補足説明である。
園芸の本には駆除方法ぐらいしか載っていない。 近い種類にバラの葉を食べるチュウレンジ・ニホンチュウレンジ・アカスジチュウレンジなどがいるので、その方面も見たが同様だ。
漢字ではチュウレンジバチを「鐫花娘子蜂」と書くらしい。 中国語での表記ということだろう。 さすがにこれの音読みから変化したとは考えにくい。 意味としては「鐫」が穴を穿つということで、穴を開けて産卵する特徴を捉えたものらしい。
寺の名前という考えも浮かぶ。 四国に中蓮寺峰という山がある。 中蓮寺はそこにかつてあった寺の名前とのこと。 山形には湯殿山注連寺がある。 しかし、関連性は見当たらない。
あとは初出でも調べるか、と「日本国語大辞典 第2版」を開く。
チュウレンジの項は無かったが、意外にも同じ読みの「ちゅうれんじ」があった。
ちゅうれんじ【中連子】[名]細長い板や竹を一定の間隔でうちつけた、中型の窓。*俳諧・去来抄(1703-04)先師評「中れんじ中切(なかぎり)あくる月かげに(去来)
これがハバチの方のチュウレンジの語源そのものである可能性も無きにしも非ずか、というのが今回の主な思いつき。
チュウレンジはバラの茎に産卵する(その卵の様子はたとえばこちらで見ることができる)が、この一つずつ部屋のように区切られています
という整然と並んだ感じを中連子に見立てたとは考えられないだろうか。
以下は完全に余談。 この「中」は本当にチュウなのだろうかと疑う事例を見てしまった。
土間へはいって、中櫺子(なかれんじ)の下の水瓶から水を汲み出し
吉川英治「梅里先生行状記」(青空文庫)
謎は謎のまま。