前回 ( abc予想と昔考えたこと )は、素数次円分多項式はその素数が7以上ならばabc予想の仮定の下で平方以上の素冪の値を高々有限回しか取らないということを示した。 素数次以外も同様のことが証明できる、というのはまあ読者の練習問題でもいいのだが、せっかくなので書いてみることにする。 \(m\) を合成数とし、\(\varphi(m)\) が \(6\) 以上(つまり \(m = 4,6,8,10,12\) 以外)と仮定しよう。 \(m\)次円分多項式 \(\Phi_m(X)\) が、\(x\) で素冪の値 \(p^n\) を取ると仮定する。ここでもちろん \(n \ge 2\) である。 円分多項式はよく知られているように \(X^m - 1 = \prod_{d | m}\Phi_d(X)\) を満たすので、 \[x^m - 1 = p^n \prod \Phi_d(x)\] と書ける。ただし、右辺の積は \(d=m\) 以外の \(m\) の約数に亘る。 \(x\) と右辺の各因子は互いに素なのでabc予想が使える。 abc予想: 任意の \(\epsilon > 0\) に対して, ある正の定数 \(K(\epsilon)\ge 1\) が存在して, 次を満たす: \(a\), \(b\), \(c\) が互いに素な整数で \(a + b = c\) を満たすならば, 不等式 \[\max \{|a|, |b|, |c|\} 少し余談を挟むと、前回もそうだったのだが、左辺は \(\max\) を取るのが大事なのではなく、「\(|a| ではまず \(|a|\) から使おう。 \[x^m 次は \(|c|\) を使う。 \[p^n\prod \Phi_d(x) 式変形を簡単にするために \(\epsilon = \frac{1}{m}\) とおく。 \(x\) の評価式の冪は次のようになる。 \[m-(m-\varphi(m)+1)(1+\frac{1}{m}) = \varphi(m) -2 + \frac{\varphi(m) - 1}{m}\] 一方 \(p\) の評価式の右辺の \(x\) の冪は \[\epsilon m - \epsilon \varphi(m) + 1 + \epsilon = 2 - \frac{\varp...